野いちご源氏物語 〇九 葵(あおい)

 伊勢(いせ)神宮(じんぐう)の斎宮(さいぐう)と同じように、賀茂(かも)神社(じんじゃ)にも斎院(さいいん)という特別な役職がある。この斎院も、帝(みかど)の代(だい)替(が)わりのたびに未婚の皇族女性から新しく選ばれる決まりだった。
 今回の代替わりで新斎院に選ばれなさったのは、弘徽殿(こきでん)の皇太后(こうたいごう)がお生みになった内親王(ないしんのう)。父(ちち)桐壺(きりつぼ)院(いん)と母(はは)皇太后は特別にかわいがっていらっしゃったから、手放すのを残念に思われた。
 賀茂神社のお祭りの前日、新斎院は大切な儀式(ぎしき)のために賀茂(かも)川(がわ)へ行かれる。選(え)りすぐりの上級貴族たちが華やかに着(き)飾(かざ)ってお供(とも)をなさる。帝(みかど)のご命令で、源氏(げんじ)の君(きみ)も特別にお加わりになった。この行列を一目(ひとめ)見ようと、大通りには見物(けんぶつ)の乗り物がたくさん集まっている。