ご寝室の近くには硯が置かれていて、何か書かれた紙も散らばっている。
左大臣様は一枚お取りになって、
<見事なご筆跡だ>
とご覧になった。
源氏の君が他人になってしまわれたことが残念でならない。
紙には、
「あなたの魂もこの寝室から離れられないのではありませんか。私もとても離れられない気がする。あなたがいらっしゃらなくなってから、私は毎夜ひとりで泣いているのですよ」
と書いてあった。
奥様の母君にお手紙を送られたときに折らせたお花が、紙にまざって少し残っていた。
もう枯れてしまっていたわ。
この紙を左大臣様は母君にお見せになった。
「姫が若くして亡くなってしまったのは、何が悪かったというのではなく、姫の運命だったのでしょうね。そう思えば慰められる気もいたしますが、源氏の君を失ってしまったことはまだ悲しいのです。光を失ったようで、これ以上生きていけるとは思えません」
と、声を上げて泣いてしまわれる。
年配の女房たちが母君の近くでお仕えしているの。
その人たちまで泣きだして、それはもう悲しい光景だった。
若い女房たちは少し離れたところに何人かずつ集まって、ひそひそと話をしている。
「源氏の君がおっしゃったように、若君のご将来を楽しみにしてお仕えするのがよいのでしょうけれど」
「お生まれになったばかりで、ご将来だなんてまだずいぶん先でございますものね」
「私はしばらく実家に下がらせていただくことにしたわ」
と、それぞれ思うところがあって、それぞれ悲しんでいた。
左大臣様は一枚お取りになって、
<見事なご筆跡だ>
とご覧になった。
源氏の君が他人になってしまわれたことが残念でならない。
紙には、
「あなたの魂もこの寝室から離れられないのではありませんか。私もとても離れられない気がする。あなたがいらっしゃらなくなってから、私は毎夜ひとりで泣いているのですよ」
と書いてあった。
奥様の母君にお手紙を送られたときに折らせたお花が、紙にまざって少し残っていた。
もう枯れてしまっていたわ。
この紙を左大臣様は母君にお見せになった。
「姫が若くして亡くなってしまったのは、何が悪かったというのではなく、姫の運命だったのでしょうね。そう思えば慰められる気もいたしますが、源氏の君を失ってしまったことはまだ悲しいのです。光を失ったようで、これ以上生きていけるとは思えません」
と、声を上げて泣いてしまわれる。
年配の女房たちが母君の近くでお仕えしているの。
その人たちまで泣きだして、それはもう悲しい光景だった。
若い女房たちは少し離れたところに何人かずつ集まって、ひそひそと話をしている。
「源氏の君がおっしゃったように、若君のご将来を楽しみにしてお仕えするのがよいのでしょうけれど」
「お生まれになったばかりで、ご将来だなんてまだずいぶん先でございますものね」
「私はしばらく実家に下がらせていただくことにしたわ」
と、それぞれ思うところがあって、それぞれ悲しんでいた。



