いよいよご出発のとき。
<あぁ、このお屋敷ともお別れか>
と、源氏の君は左大臣邸を見回してごらんになる。
ついたての後ろなど、あちこちに三十人ほどの女房たちがいるの。
みんな喪服を着て、とても心細そうにしている。
源氏の君は同情なさった。
左大臣様は泣きながらおっしゃる。
「若君はこの屋敷でお育てするのですから、何かのついでにはお越しくださるだろうと期待しております。しかし女房たちのなかには、あなたはもうこれきりここへはお越しにならないと悲しんでいる者も多いのでございますよ。姫が亡くなったこと以上に悲しんでいるほどです。
私は、あなたがいつかこの家で暮らしてくださる日を夢見ておりました。その夢がついに跡形もなく消える、悲しい夕べでございます」
「そのように悲しまれますな。姫君がお元気だったころは、正式な夫婦であることに甘えてご訪問を怠けることもありましたが、今となっては甘えられる理由もございません。私が怠ければ切れてしまうご縁だと分かっておりますから、私の誠意をご覧ください」
と左大臣様と約束して、源氏の君はご出発なさったわ。
お見送りがすんで、左大臣様は源氏の君のお部屋に戻られる。
お部屋のなかは何も変わらないはずなのに、なんだか急にがらんとしたの。
<まるで蝉の抜け殻のようだ>
とお感じになっていた。
<あぁ、このお屋敷ともお別れか>
と、源氏の君は左大臣邸を見回してごらんになる。
ついたての後ろなど、あちこちに三十人ほどの女房たちがいるの。
みんな喪服を着て、とても心細そうにしている。
源氏の君は同情なさった。
左大臣様は泣きながらおっしゃる。
「若君はこの屋敷でお育てするのですから、何かのついでにはお越しくださるだろうと期待しております。しかし女房たちのなかには、あなたはもうこれきりここへはお越しにならないと悲しんでいる者も多いのでございますよ。姫が亡くなったこと以上に悲しんでいるほどです。
私は、あなたがいつかこの家で暮らしてくださる日を夢見ておりました。その夢がついに跡形もなく消える、悲しい夕べでございます」
「そのように悲しまれますな。姫君がお元気だったころは、正式な夫婦であることに甘えてご訪問を怠けることもありましたが、今となっては甘えられる理由もございません。私が怠ければ切れてしまうご縁だと分かっておりますから、私の誠意をご覧ください」
と左大臣様と約束して、源氏の君はご出発なさったわ。
お見送りがすんで、左大臣様は源氏の君のお部屋に戻られる。
お部屋のなかは何も変わらないはずなのに、なんだか急にがらんとしたの。
<まるで蝉の抜け殻のようだ>
とお感じになっていた。



