その頃 左大臣邸では、どうやっても奥様から引き離すことのできなかった妖怪が、ついに本気を出していた。
奥様はお命が危ないほどになってしまわれたの。
世間では無責任な噂が流れる。
「六条御息所が妖怪に化けていらっしゃるのではないか」
「六条御息所の亡きお父君の妖怪かもしれない」
と騒がれていることが、御息所のお耳に入ってしまった。
御息所はもともと思いつめてしまわれるご性格だから、噂を聞き流すことなどおできにならない。
<私には誰かを恨む気持ちなどないと思っていたけれど、悩みすぎると体から魂が抜け出てしまうという。知らないうちに私の魂が左大臣邸へ行って、妖怪に化けているのかもしれない>
と不安になってしまわれる。
そういえばたしかに、奥様との揉め事があってから、御息所は悪夢をご覧になるようになったの。
美しい姫君が寝ていらっしゃるところへ行って、姫君を呪いながら激しくぶつ夢よ。
<あの姫君は源氏の君のご正妻だったのだ>
と愕然となさる。
<なんということ。体から魂が抜け出るというのは本当だったのか。これが世間に知られたら、どんな噂を立てられるだろう。亡くなった人の妖怪というのはよく聞く話だけれど、私はまだ生きているというのに。源氏の君の冷淡さを悩みすぎているせいだ。あぁもう、あの人のことはすっぱり忘れよう>
とお思いになる。
でも、忘れよう忘れようと思っているうちは忘れられないのよね。
御息所の姫宮はまもなく、都の郊外にある特別なお屋敷に引っ越しなさるご予定なの。
伊勢神宮の斎宮になられるためのご準備よ。
それなのに母君である御息所がぼんやりと正気をなくしたご様子でいらっしゃるので、周りの人たちは困ってしまう。
ご回復のお祈りもしているのだけれど、このご病気は良くも悪くもならないままなの。
源氏の君もご心配なさって、たびたびお手紙をお送りになる。
あちらもこちらもご病気で、お心が休まる暇もないようだったわ。
奥様はお命が危ないほどになってしまわれたの。
世間では無責任な噂が流れる。
「六条御息所が妖怪に化けていらっしゃるのではないか」
「六条御息所の亡きお父君の妖怪かもしれない」
と騒がれていることが、御息所のお耳に入ってしまった。
御息所はもともと思いつめてしまわれるご性格だから、噂を聞き流すことなどおできにならない。
<私には誰かを恨む気持ちなどないと思っていたけれど、悩みすぎると体から魂が抜け出てしまうという。知らないうちに私の魂が左大臣邸へ行って、妖怪に化けているのかもしれない>
と不安になってしまわれる。
そういえばたしかに、奥様との揉め事があってから、御息所は悪夢をご覧になるようになったの。
美しい姫君が寝ていらっしゃるところへ行って、姫君を呪いながら激しくぶつ夢よ。
<あの姫君は源氏の君のご正妻だったのだ>
と愕然となさる。
<なんということ。体から魂が抜け出るというのは本当だったのか。これが世間に知られたら、どんな噂を立てられるだろう。亡くなった人の妖怪というのはよく聞く話だけれど、私はまだ生きているというのに。源氏の君の冷淡さを悩みすぎているせいだ。あぁもう、あの人のことはすっぱり忘れよう>
とお思いになる。
でも、忘れよう忘れようと思っているうちは忘れられないのよね。
御息所の姫宮はまもなく、都の郊外にある特別なお屋敷に引っ越しなさるご予定なの。
伊勢神宮の斎宮になられるためのご準備よ。
それなのに母君である御息所がぼんやりと正気をなくしたご様子でいらっしゃるので、周りの人たちは困ってしまう。
ご回復のお祈りもしているのだけれど、このご病気は良くも悪くもならないままなの。
源氏の君もご心配なさって、たびたびお手紙をお送りになる。
あちらもこちらもご病気で、お心が休まる暇もないようだったわ。



