六条御息所も、悩みすぎてご体調を悪くされていた。
源氏の君はそれをお聞きになって、お見舞いに行かれる。
長い間お訪ねしなかったことをうまく言い訳なさって、奥様のご懐妊とご病気のこともお話しになるの。
「私はたいした病気でもないと思っているのですが、左大臣家が妻をひどく心配しておりますので、婿としては放っておくわけにもいかないのです。しばらくお訪ねできそうにありませんが、どうぞ大目に見てくださいますように」
とおなぐさめになる。
御息所はいつもよりもお苦しそうでいらっしゃった。
<伊勢へ行かれるかどうか、お決めになれず悩んでおられるのだろう。しかも私がこちらへ伺わないのだから、おつらいのも当然だ>
と源氏の君はお思いになっていた。
源氏の君はお泊まりになったけれど、おふたりの間の溝が埋まることはなかった。
早朝に左大臣邸へお帰りになろうとなさる。
そのお姿があまりにお美しいので、御息所は、
<やはり伊勢へは行けない。でも、お子がお生まれになったら、ますます私の影は薄くなるだろう>
とお悩みになる。
夕方になって、源氏の君からお手紙が届いた。
「ここ最近よくなっておりました妻の病気が、急にまた悪くなってしまったためお伺いできません」
とあるの。
御息所は<言い訳だろう>とお疑いになって、
「恋と涙は切り離せないものと分かっておりましたけれど、涙どころか泥沼にはまってしまいました。あなたのご冷淡さがつらいのです」
とお返事なさった。
<やはりご筆跡は最高にお見事だ。このご筆跡を見ると捨てることなどできない人だけれど、妻にしたいと思えるほど決定的なところはおありでない。どの女性も、長所があれば短所もあって、難しいものだな>
と苦々しくお思いになる。
お返事は夜遅くなってから、
<どれほどの深さの泥沼でしょうか。きっと私の方が深い泥沼にはまっておりますよ。直接胸のうちをお話ししたいところですが、妻の病状が重くなりましたのでお手紙で失礼いたします>
とお送りになる。
これは言い訳ではなく本当に違いないと思われるような、めずらしい走り書きだったわ。
源氏の君はそれをお聞きになって、お見舞いに行かれる。
長い間お訪ねしなかったことをうまく言い訳なさって、奥様のご懐妊とご病気のこともお話しになるの。
「私はたいした病気でもないと思っているのですが、左大臣家が妻をひどく心配しておりますので、婿としては放っておくわけにもいかないのです。しばらくお訪ねできそうにありませんが、どうぞ大目に見てくださいますように」
とおなぐさめになる。
御息所はいつもよりもお苦しそうでいらっしゃった。
<伊勢へ行かれるかどうか、お決めになれず悩んでおられるのだろう。しかも私がこちらへ伺わないのだから、おつらいのも当然だ>
と源氏の君はお思いになっていた。
源氏の君はお泊まりになったけれど、おふたりの間の溝が埋まることはなかった。
早朝に左大臣邸へお帰りになろうとなさる。
そのお姿があまりにお美しいので、御息所は、
<やはり伊勢へは行けない。でも、お子がお生まれになったら、ますます私の影は薄くなるだろう>
とお悩みになる。
夕方になって、源氏の君からお手紙が届いた。
「ここ最近よくなっておりました妻の病気が、急にまた悪くなってしまったためお伺いできません」
とあるの。
御息所は<言い訳だろう>とお疑いになって、
「恋と涙は切り離せないものと分かっておりましたけれど、涙どころか泥沼にはまってしまいました。あなたのご冷淡さがつらいのです」
とお返事なさった。
<やはりご筆跡は最高にお見事だ。このご筆跡を見ると捨てることなどできない人だけれど、妻にしたいと思えるほど決定的なところはおありでない。どの女性も、長所があれば短所もあって、難しいものだな>
と苦々しくお思いになる。
お返事は夜遅くなってから、
<どれほどの深さの泥沼でしょうか。きっと私の方が深い泥沼にはまっておりますよ。直接胸のうちをお話ししたいところですが、妻の病状が重くなりましたのでお手紙で失礼いたします>
とお送りになる。
これは言い訳ではなく本当に違いないと思われるような、めずらしい走り書きだったわ。



