翌日、大輔の命婦が内裏で働いていると、源氏の君がふらりといらっしゃった。
「これは昨日のお返事だ。恐れ多いお手紙だったから、お返事を書くのも大変だった」
とおっしゃって、お手紙をぞんざいにお渡しになる。
他の女官たちは、<どなたへのどんなお手紙かしら>と気にしている。
「紅梅の花の色のような鼻でもあったな」
と独り言をおっしゃって出ていかれるので、命婦はまたおかしくなってしまう。
何も知らない女官たちは、
「変ね。ここに赤い鼻の女官なんていないのに」
と言いあっていたわ。
源氏の君からのお返事が姫君のところに届くと、女房たちは姫君の周りに集まって拝見する。
「こんなにたくさん着物をいただいては、着物を重ねるように、会えない夜が重なってしまいそうです」
と、白い紙にささっと書かれていた。
いかにも恋文という感じではないけれど、かえって風流なお手紙だったわ。
大晦日の夕方、姫君から贈られた古めかしい大きな箱に、源氏の君は姫君の着物をいろいろ入れてお贈りになった。
仕立てはもちろん一流で、色合いはどれも現代風だけど上品よ。
老女房は、姫君が源氏の君に贈った着物の色合いと、届いた着物の色合いが全然違うことに気づいた。
「こちらからお贈りしたお着物の色がよくなかったと、暗に仰せなのではございませんか」
と不安そうに言うと、別の老女房が、
「いえいえ、あれは紅色がくっきりはっきりと出て、見事な布地でございましたよ。源氏の君がお贈りくださったお着物にも引けは取りません」
と言う。
「お手紙だってそうでございますよ。姫君のお書きになる文章は堂々としてご立派でございます。こう申しては何ですが、あちらからのお手紙は風流なだけでございます」
と、口々に姫君をほめるの。
「これは昨日のお返事だ。恐れ多いお手紙だったから、お返事を書くのも大変だった」
とおっしゃって、お手紙をぞんざいにお渡しになる。
他の女官たちは、<どなたへのどんなお手紙かしら>と気にしている。
「紅梅の花の色のような鼻でもあったな」
と独り言をおっしゃって出ていかれるので、命婦はまたおかしくなってしまう。
何も知らない女官たちは、
「変ね。ここに赤い鼻の女官なんていないのに」
と言いあっていたわ。
源氏の君からのお返事が姫君のところに届くと、女房たちは姫君の周りに集まって拝見する。
「こんなにたくさん着物をいただいては、着物を重ねるように、会えない夜が重なってしまいそうです」
と、白い紙にささっと書かれていた。
いかにも恋文という感じではないけれど、かえって風流なお手紙だったわ。
大晦日の夕方、姫君から贈られた古めかしい大きな箱に、源氏の君は姫君の着物をいろいろ入れてお贈りになった。
仕立てはもちろん一流で、色合いはどれも現代風だけど上品よ。
老女房は、姫君が源氏の君に贈った着物の色合いと、届いた着物の色合いが全然違うことに気づいた。
「こちらからお贈りしたお着物の色がよくなかったと、暗に仰せなのではございませんか」
と不安そうに言うと、別の老女房が、
「いえいえ、あれは紅色がくっきりはっきりと出て、見事な布地でございましたよ。源氏の君がお贈りくださったお着物にも引けは取りません」
と言う。
「お手紙だってそうでございますよ。姫君のお書きになる文章は堂々としてご立派でございます。こう申しては何ですが、あちらからのお手紙は風流なだけでございます」
と、口々に姫君をほめるの。



