常陸の宮様の姫君のご容姿が、まぁそこそこという程度だったら、源氏の君は捨ててしまわれたかもしれない。
でも、あれほどのご容姿だと知ってしまわれたから、ただひたすらお気の毒で仕方がないの。
それで、恋人というより父か兄のように熱心にお世話をなさる。
さすがに黒い毛皮ではあんまりだからと、絹や綿の布を姫君に贈られた。
年老いた女房たちや、門番の年寄りのための着物までお贈りになったわ。
姫君のお屋敷では、源氏の君からの贈り物を素直によろこんでお受け取りになった。
<こんなことまで恋人に心配されるのは恥ずかしい>
とはお思いにならないようなので、源氏の君も気楽にあれこれとお贈りになる。
恋人として打ちとけた関係にはなれなかったけれど、姫君の後見として親密な関係になっていかれたのだから、男女の仲とは不思議なものよね。
源氏の君にだって、容姿のすぐれない恋人がいなかったわけではないの。
<空蝉の君が継娘と囲碁をしているのを覗き見したとき、容姿は今ひとつだったけれど、ふるまいが上品でそれほど悪くは見えなかった。あの人は中流貴族の後妻で、宮様の姫君よりもずっと身分が低かったというのに。身分は関係なく、個人の性質の問題なのだろう。その点でも、やはり空蝉の君はよい女性だった。やさしいが芯の強い人で、ついに私は勝てなかった>
と、なつかしく思い出していらっしゃる。
でも、あれほどのご容姿だと知ってしまわれたから、ただひたすらお気の毒で仕方がないの。
それで、恋人というより父か兄のように熱心にお世話をなさる。
さすがに黒い毛皮ではあんまりだからと、絹や綿の布を姫君に贈られた。
年老いた女房たちや、門番の年寄りのための着物までお贈りになったわ。
姫君のお屋敷では、源氏の君からの贈り物を素直によろこんでお受け取りになった。
<こんなことまで恋人に心配されるのは恥ずかしい>
とはお思いにならないようなので、源氏の君も気楽にあれこれとお贈りになる。
恋人として打ちとけた関係にはなれなかったけれど、姫君の後見として親密な関係になっていかれたのだから、男女の仲とは不思議なものよね。
源氏の君にだって、容姿のすぐれない恋人がいなかったわけではないの。
<空蝉の君が継娘と囲碁をしているのを覗き見したとき、容姿は今ひとつだったけれど、ふるまいが上品でそれほど悪くは見えなかった。あの人は中流貴族の後妻で、宮様の姫君よりもずっと身分が低かったというのに。身分は関係なく、個人の性質の問題なのだろう。その点でも、やはり空蝉の君はよい女性だった。やさしいが芯の強い人で、ついに私は勝てなかった>
と、なつかしく思い出していらっしゃる。



