十月になって、いよいよ空蝉の君が夫と地方へ行く日が近づいた。
一緒についていく女房たちのためにと、源氏の君はたくさんの餞別——旅する人への贈り物を届けさせたわ。
それとは別に、こっそりと空蝉の君にも贈り物を差し上げる。
細工の美しい櫛や扇をたくさんと、それからあの夜持って帰ってしまわれた女君の着物も。
贈り物に女君へのお手紙をお添えになる。
「またお会いできるときまでと思って抜け殻を大切にしておりましたが、お会いできないまま長い時間が経ってしまいました」
女君は小君にお返事を届けさせなさった。
「お返しいただいた夏用の着物は、もう着られる季節ではございませんね。あのころを懐かしく思って涙がこぼれることもございます」
源氏の君は、
「信じられないほど心の強い人だった。ついに私になびくことなく離れていってしまわれる」
と残念に思っていらっしゃった。
いかにも冬のはじまりにふさわしい、冷たい雨が降っている。
「秋と一緒に恋がふたつ終わったのだ。一人は死んでしまい、一人は遠くへ離れていってしまった。どちらも世間の目が気になる秘密の恋で、ずいぶんと苦しんだものだ」
と静かにふり返っておられたわ。
一緒についていく女房たちのためにと、源氏の君はたくさんの餞別——旅する人への贈り物を届けさせたわ。
それとは別に、こっそりと空蝉の君にも贈り物を差し上げる。
細工の美しい櫛や扇をたくさんと、それからあの夜持って帰ってしまわれた女君の着物も。
贈り物に女君へのお手紙をお添えになる。
「またお会いできるときまでと思って抜け殻を大切にしておりましたが、お会いできないまま長い時間が経ってしまいました」
女君は小君にお返事を届けさせなさった。
「お返しいただいた夏用の着物は、もう着られる季節ではございませんね。あのころを懐かしく思って涙がこぼれることもございます」
源氏の君は、
「信じられないほど心の強い人だった。ついに私になびくことなく離れていってしまわれる」
と残念に思っていらっしゃった。
いかにも冬のはじまりにふさわしい、冷たい雨が降っている。
「秋と一緒に恋がふたつ終わったのだ。一人は死んでしまい、一人は遠くへ離れていってしまった。どちらも世間の目が気になる秘密の恋で、ずいぶんと苦しんだものだ」
と静かにふり返っておられたわ。



