野いちご源氏物語 〇四 夕顔(ゆうがお)

夕顔(ゆうがお)(きみ)四十九日(しじゅうくにち)法要(ほうよう)を、源氏(げんじ)(きみ)は盛大に行った。
具体的に誰の法要かはおっしゃらなかったけれど、その盛大さから、源氏の君がとても愛された女性なのだろうとその場にいた人たちは想像したわ。

お寺に差し上げるお(そな)(もの)のなかに、女性用の(はかま)があった。
源氏の君が夕顔の君を思い出しながら特別にお作らせになったのよ。
源氏の君はその袴をご覧になって、
「袴の(ひも)は結んでおこう。来世(らいせ)で私がほどくまで、そのままにしておいてくれるか」
と、夕顔の君の(たましい)に話しかけていらっしゃった。
四十九日の法要がすむと、亡くなった人の魂はこの世から消えてしまうの。
今、女君(おんなぎみ)の魂はどこに向かっているのか、どうか幸せな場所へ向かっていてほしいと念じながら、源氏の君はお(きょう)を読んでいらっしゃった。

頭中将(とうのちゅうじょう)様にお会いになるたびに、源氏の君は気まずくなられる。
夕顔の君は亡くなったけれど、頭中将様とのお子様は田舎(いなか)で育てられているの。
そのことを教えたいけれど、教えたら頭中将様から責められそうで打ち明けられずにいらっしゃった。