野いちご源氏物語 〇三 空蝉(うつせみ)

 源氏(げんじ)(きみ)は眠れないまま、小君(こぎみ)にこぼされる。
「私はこんなふうに女性から嫌われたことがないのだよ。今夜初めて失恋のつらさを思い知った。恥ずかしくて死んでしまいたい」
 隣で横になっている小君は、悲しくなって泣いてしまう。かわいらしい子だと源氏の君はご覧になった。姉弟(きょうだい)だからか、ほっそりした体つきや髪の感じがよく似ている。
<これ以上しつこく言い寄るのはみっともないだろう。まったく強情(ごうじょう)な人だ>
 源氏の君は一晩中悶々(もんもん)として、いつものように小君をかわいがることもなさらない。
 まだ夜明けまで間があるのに、紀伊()(かみ)の屋敷をご出発なさる。小君は源氏の君がお気の毒で、(さび)しいとも思う。

 女君(おんなぎみ)もさすがに申し訳なく思っていたけれど、源氏の君からお手紙は来ない。
()りてしまわれたのだろう>
 ほっとする一方で、
<このままご連絡が途絶(とだ)えてしまうのは悲しい。かと言ってあのような無茶なことが続くのも困る。やはりこのあたりで終わりにするのがよいだろうけれど>
 と思い悩む。