「そろそろ私なりの妻選びの結論を申し上げましょう。
今はもう、女性の身分や見た目にこだわりません。ひねくれた性格ではなくて、誠実で大人しい人ならば妻にいたします。もしそれ以外の長所があれば幸運に思いますし、何か苦手な家事があっても無理に上達させようとはいたしません。浮ついたところががなくて嫉妬もしない女性なら、風情ある雰囲気などは後から自然と身につけていくでしょう」
これで話が終わったかと思いきや、
「嫉妬と言えば」
と、また始まった。
「一番困るのは、夫の浮気を悲しんで、いきなり行方不明になる妻ですよ。そういう女性はたいてい、恥ずかしいからと夫に恨み言も言わず、素知らぬふりでぎりぎりまで耐えるのです。そしてひとたび限界を超えてしまうと、すさまじい悲壮感の和歌や、これ見よがしな形見を残して、山奥や海辺などに身を隠してしまいます。
子どものころに物語として聞いたときは、なんと気の毒な女性だと同情いたしましたが、今思うとああいうのは軽はずみでわざとらしい振舞いですな。多少浮気をしたとはいえ、夫は妻を真剣に愛していたのです。その愛情を理解しようともせず、逃げ隠れして夫を苦しめ、試そうとする。それで一生を棒に振るなんて、非常につまらないことですよ。
さらに厄介なのは、そういう軽はずみな振舞いをほめる人がいることです。おだてられた女性はますます興奮して、ついには出家してしまうことさえあります。『家族と縁を切って尼になり、仏教の道へ入るのだ』なんて立派なことを言うのですが、最初のうちは自分に酔っていても、周りからあれこれ心配されると出家を後悔してしまう。罰当たりなことです。
もし出家する前に運よく見つけ出せたとしても、やはり一度行方をくらませた人など、もうそれまでのように信頼できませんでしょうね。
ある程度長い間夫婦としてやってきたのなら、多少夫が浮気しても、それで関係をおしまいにしてしまうのはもったいないでしょう。何事も穏やかに、ちくりと言うにしても夫が憎たらしいと思わないような言い方をすれば、むしろ男はいじらしい人だと思うものですよ。
つまり、女が男をうまくつなぎとめておけばよいのです。男を自由にしすぎると、男は気楽ですがその女を軽んじるようになるでしょう。放っておかれるのも男としてはおもしろくありませんから。そうではございませんか」
頭中将はうなずかれる。
「たしかにそうだ。では逆に、女に浮気された場合はどうだろう。それもまた一大事だ。男の側に悪いところはなかったとしても、事を荒立てて女を責めてはうまくいかないような気がする。やはり男にしても女にしても、相手の多少の間違いは見て見ぬふりをして、穏やかにしているのが一番よい態度だろうね」
そう言いながら、ご自分の妹君のことをお考えになる。
<夫である源氏の君に多少の間違いがあったとしても、妹は軽はずみなことも騒ぎ立てることもしないだろう。今の話をお聞きになって、自分はなかなかよい妻を持ったと思ってくださっているだろうか>
源氏の君をご覧になると、寝たふりをなさって何もおっしゃらない。
<ずるい人だ>
と頭中将はお思いになる。
今はもう、女性の身分や見た目にこだわりません。ひねくれた性格ではなくて、誠実で大人しい人ならば妻にいたします。もしそれ以外の長所があれば幸運に思いますし、何か苦手な家事があっても無理に上達させようとはいたしません。浮ついたところががなくて嫉妬もしない女性なら、風情ある雰囲気などは後から自然と身につけていくでしょう」
これで話が終わったかと思いきや、
「嫉妬と言えば」
と、また始まった。
「一番困るのは、夫の浮気を悲しんで、いきなり行方不明になる妻ですよ。そういう女性はたいてい、恥ずかしいからと夫に恨み言も言わず、素知らぬふりでぎりぎりまで耐えるのです。そしてひとたび限界を超えてしまうと、すさまじい悲壮感の和歌や、これ見よがしな形見を残して、山奥や海辺などに身を隠してしまいます。
子どものころに物語として聞いたときは、なんと気の毒な女性だと同情いたしましたが、今思うとああいうのは軽はずみでわざとらしい振舞いですな。多少浮気をしたとはいえ、夫は妻を真剣に愛していたのです。その愛情を理解しようともせず、逃げ隠れして夫を苦しめ、試そうとする。それで一生を棒に振るなんて、非常につまらないことですよ。
さらに厄介なのは、そういう軽はずみな振舞いをほめる人がいることです。おだてられた女性はますます興奮して、ついには出家してしまうことさえあります。『家族と縁を切って尼になり、仏教の道へ入るのだ』なんて立派なことを言うのですが、最初のうちは自分に酔っていても、周りからあれこれ心配されると出家を後悔してしまう。罰当たりなことです。
もし出家する前に運よく見つけ出せたとしても、やはり一度行方をくらませた人など、もうそれまでのように信頼できませんでしょうね。
ある程度長い間夫婦としてやってきたのなら、多少夫が浮気しても、それで関係をおしまいにしてしまうのはもったいないでしょう。何事も穏やかに、ちくりと言うにしても夫が憎たらしいと思わないような言い方をすれば、むしろ男はいじらしい人だと思うものですよ。
つまり、女が男をうまくつなぎとめておけばよいのです。男を自由にしすぎると、男は気楽ですがその女を軽んじるようになるでしょう。放っておかれるのも男としてはおもしろくありませんから。そうではございませんか」
頭中将はうなずかれる。
「たしかにそうだ。では逆に、女に浮気された場合はどうだろう。それもまた一大事だ。男の側に悪いところはなかったとしても、事を荒立てて女を責めてはうまくいかないような気がする。やはり男にしても女にしても、相手の多少の間違いは見て見ぬふりをして、穏やかにしているのが一番よい態度だろうね」
そう言いながら、ご自分の妹君のことをお考えになる。
<夫である源氏の君に多少の間違いがあったとしても、妹は軽はずみなことも騒ぎ立てることもしないだろう。今の話をお聞きになって、自分はなかなかよい妻を持ったと思ってくださっているだろうか>
源氏の君をご覧になると、寝たふりをなさって何もおっしゃらない。
<ずるい人だ>
と頭中将はお思いになる。



