悪事通報アプリ

律儀に読みかけの本にシオリを挟んで机に置く。
「おはよう」

そう答える声はか細くて近くにいても聞き取れないくらいだった。
でも、これが彼の通常運転だ。

「ケガ、大丈夫?」
「うん。大したことはなかったよ」
腕に巻かれている白い包帯は痛々しく見えるけれど、本人は至って元気そうだ。

「包帯がね、ちょっと大げさなんだ。傷口はもっと小さいのに」
と、親指と人差指でケガの大きさを表現してみせてくる。

思っていたよりも狭い範囲のやけどだったみたいで、ようやく安心した。
「そっか。それならよかった」

「うん。心配してくれてありがとう」
川並正則はそれだけ言うと、また本を手にとってシオリを挟んだ場所から読み始めたのだった。

自分の席に戻った時、美羽たちが教室に入ってきた。
できるだけ視線を向けずに教科書とノートを取り出す。

昨日は蒼にノートをズタズタにされてしまったから、今日は新しいものを持ってきた。
「あれれ? ノート新品じゃんどうしたのぉ?」

通りかかった蒼がわざとらしく声をかけていくが、無視した。