神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜

双真からすれば、瞳子と一緒にいられることが嬉しかっただけなのだが。喜びを噛み殺したのがいけなかったらしい。

不服そうに唇をとがらす瞳子には悪いが、もう我慢の限界だった。ついばむように、その可愛らしい紅唇を奪う。
瞳子の額に額を寄せて、ささやいた。

「──悪い。瞳子が愛しすぎて、顔がニヤけた」
「もうっ……」

ぎゅっと、双真の夜着の前身ごろを瞳子の両手がつかむ。秘め事を口にするように、小さな声で瞳子が言った。

「このまま朝まで、アンタの部屋に、居てもいい……?」

恥ずかしそうに半眼に伏せられた黒い瞳と、わずかにうわずった、甘い声音。

「ああ。二人で朝寝しよう」

応じた双真の視線が、開かれた障子戸へと向く。夜気にも月光にも、さらしたくない己の“花嫁”のため、音もなくそれは閉められた。

さえぎられた隔たりのなか。秘めたる吐息も声も、交わす熱も。知るのは、互いだけでいいのだから。



朝寝をしよう、と、告げたはずなのに。
双真は、考えていた刻限(じかん)よりも早く、起こされた。

「ね、ちょっと……コレ、何かな?」
「ん……瞳子……もう少し──」

自らを揺さぶる細い指の持ち主の、匂いと柔らかさを離したくなくて、その手首をつかみ、さえぎる。