神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜

そのうえ『人』であった時は、領地の娘を手当たり次第、自分のものにしたとも思われてますから、かなり(よこしま)な“神獣(かみ)”サマだと官にも民にも知れ渡ってますよ、と。
付け加えられた自己への評価に、双真は頭を抱えてしまう。

(噂とはいえ、尾ひれが付き過ぎだろ)

自分のことは何と思われてもいい。だが、そのことによって瞳子まで(おとし)められるのは我慢がならない。

(これも、『人』であった時の己の浅はかさゆえか……)

誤解されても構わないと思っていたから、あえて火消しには回らなかった。それが、こんな結果を招くとは。

「……汚名を返上する場を設けなければならないな」
「“神現(かみあらわ)しの(うたげ)”ですね。先に“宣下(せんげ)”を受けなければなりませんから……まぁ、年の瀬か、年が改まってからでしょうね。
輝玄(てるつね)殿に相談しておきますよ」
「頼む」

『虎太郎』の祖父・尊臣(たかおみ)が国司だった代から各国にも拡がったという、“神獣”をその国の民に披露する宴。

当初、“神獣”を見世物にするような場に眉をひそめる者も少なくなかった。
しかし、“神獣”という存在(もの)への理解や畏敬の念、また『拝謁料』を徴収できるという支配者側の旨味(うまみ)もあることから、今では“神獣”の代替わりと共に行われる神事のひとつとなっていた。