神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜

「本当に薄情なら……こんな風に、涙をためて自分をけなしたりはしないだろう」
「……っ……」

その一言で、瞳子のなかの諸々の感情が決壊した。
罪悪感。過去の日々。好意。明かされた真実。同情。返せない想い。
そして何より───。

「私が好きなのは、アンタなの」

口にした瞬間、涙があふれた。とめどなく流れ落ちる想いは、白狼に寄せられる想いには、どうあっても報えない。

「どう……返したらいいのか、解らなかった……! 樋村が最期まで私のこと想ってくれてたとしても、こっちの世界に来てまで私を想ってくれていたのだとしても。
私には、何も返してやれるものがないもの……!」

仕方ないと割り切れるほどには、無情にもなれなかった心。
やるせない思いがありながらも、表には決して出せなかった。

「絆が芽生えることはないと言い切ったのは、白狼殿のこれからと……オレの気持ちを思いやってくれたからだって、オレも……白狼殿もきっと、解ってる」

───そんな瞳子の思いすら、双真には見抜かれていたのだ。

瞳子に伸ばされた双真の両腕が、壊れものを扱うように、やんわりとした力でもって抱きしめてくる。
その胸に頬をうずめ、響いてくるのは、瞳子を想う優しい声音。

「ありがとう、瞳子。あの時、オレの“花嫁”になることを、選んでくれて」