神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜

(そうだ。瞳子は、オレが“神獣”に戻れたら)

絶対、格好良いはず、と、言いきってくれていた。喜んでくれるのは、道理だ。

瞳子、と、呼びかけた双真をさえぎり、瞳子が叫んだ。

「かっわいいぃーッ! なに、アンタ、ちっちゃ。可愛いんだけど! え? なんで?」
『瞳子……ちっちゃ、は、なかなかオレの自尊心をえぐる言葉なんだが』
「だって、本当に可愛いんだもん……なんか、近所の中型犬並みだよ。ちょっと痩せ気味の。毛艶はすこぶる良いけど」
『……それは、喜んでくれてるのか?』
「当たり前じゃない! ヤダ、もうっ……。抱きついても、いい?」
『あ、ああ……』

身悶(みもだ)えるようにしてこちらを見る瞳子に、複雑な心境になるくらいには、双真自身、己の肉体(うつわ)の有り様に実感がない。

(オレの身体は……そんなに小さいのか?)

言われて見れば、なんだか瞳子が少し大きくなったようにも見える。と、同時、腕をひろげてみせた瞳子のやわらかな肢体が、双真を包みこんだ。
文字通り、すっぽりとその華奢(きゃしゃ)な腕の中に収まってしまうほどに、自分は小さいらしい。

瞳子のぬくもりと匂いに囲まれているのが嬉しい反面、男としてのちっぽけな矜持(きょうじ)は傷つけられる。

(……だが、まぁ)

瞳子がこんなに手放しで喜んでくれるなら、それが一番、双真を幸福な気分にしてくれた。