神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜

己の、“神獣”としての証明(あかし)が問われている。

「セ……双真」

両手の指に余るほどしか口にしてない真名(なまえ)で呼び、瞳子はその場でひざをつくと、双真の片手に触れた。

「私、お願いしても、いい? ……アンタの、真実(ほんとう)の姿、見せて欲しいって」
「瞳子……」
「たぶん、今なら……見せてくれるよね?」

───獣である本性をさらすことは、自分を愛しく想ってくれる者を悲しませる。決して、幸せな気分にさせないのだという、過去。
虎太郎(こたろう)』は、人でなければならなかったから。

“神獣”といえど、(けだもの)だ。人とは、相容れない。

人とは違う形をし、人とは違う(さが)をもつ。異なる種族ゆえの、必然の(ことわり)

『人の形』であるから、愛しいと触れてくれるのだ。想いを寄せてくれるのも、『人の形』をした(うつわ)があればこそだろう。

───それが、人の本意だ。純然たる事実。
違う種で実を結ぶことがないように、自然の理とはそういうものだ。

(解っている)

それでも───この手に触れるぬくもりが、それを、望むなら。応えるのが、“神獣(じぶん)”。

「ああ───瞳子」

置かれた手に手を重ね、うなずいて見せる。それから、御座(みくら)の上のぬしを見やった。

「御前にて、衣を解く御無礼をお赦しいただきたく存じます」