神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜

立つ鳥跡を濁さずというほどではないが、でき得る限り、瞳子と二人、世話になったという意味でも屋敷内の掃除や洗濯を行った。

応じた双真を見上げ、瞳子がふふっと笑う。

「なんか……アンタのそのカッコ、久しぶりに見たせいか、似合わない時代劇コスプレに見える」
「ああ。実はオレも、この格好が意外に肩が凝ることに気づいた」

瞳子の軽口に、思わず双真も笑いながら、(たもと)を寄せて片腕を回してみせる───こちらの衣が楽だと思えるくらい、自分がこの世界に馴染んでいた証だろう。

双真とは違い、こちらの衣服に身をつつんだままの瞳子を見て、微笑んだ。

「瞳子は何を着ても似合って見えるが───萩原(はぎはら)家に向かう朝に着ていた緋色の小袖と黒い筒袴姿が、この世のものとは思えないくらい、綺麗だったな」
「……おおげさ! あと、過去形は何気に失礼だから!」
「そうだな、悪い。けど」

抗議の平手を胸に受け、やり過ごした双真は、手を伸ばさずにいられない愛しの“花嫁”の身体を自らの腕のなかに囲う。

「あんまり瞳子が綺麗に見えすぎても、こんな風に気軽に閉じ込めておけないしな……あえて、自分の目に(しゃ)をかけるようには努力してる」