神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜

螺鈿(らでん)細工が施された長方形の箱には、角度によって薄青くも薄赤くも光って見える、不思議な白い組紐が蝶結びされていた。

「───で? コレって……玉手箱じゃないでしょうね?」
「なるほど、御伽(おとぎ)草子(ぞうし)か。心配なら、オレ一人で別室で開けてくるが」

瞳子の言葉に面白そうに笑い、腰を上げようとする双真の腕を、あわててつかみ寄せる。

「ちょっと! アンタ一人でおじいちゃんになって、私置いて()くなんて赦さないからね!」
「分かってる。ちょっと言ってみただけだ。
───では、共白髪(ともしらが)と行くか」

瞳子をチラリと意味ありげに見たあと、双真の指が白い組紐をほどいた。

「……赤い紐、と」
「“金の稲穂”ではなかったか。……ではこちらは、指示書きのようなものか」

箱の中身に見当がついているような素振りでいた双真が、意外そうに眉を上げ、一緒に入っていた折りたたまれた和紙をひらく。

瞳子も横から覗きこみはしたが、残念ながら読めそうもなく───字形は漢字に似てはいるが、文章として読むには厳しいものがあった。

(たぶん、漢文に近いんだろうけど……)

すぐに読める気がしない。瞳子は、自身での解読をあきらめ、双真からの説明を待つことにした。