神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜

(叔母さん、私ね───)

瞳子は、隣で神妙な顔をして合掌する青年を見て、それから、墓石を見つめた。

(好きな人ができたよ。……正確には、神サマだけど)

あんまり、神様っぽくないよね、と、思わず朱鷺子の面影に向け笑いかけてしまう。

初めて双真の名を赤い布の上で【読み】、そして彼自身を知っていくうちに、瞳子は、その名前が彼の本質を表しているのだと気づいた。

──(ふた)つの(まこと)
人として育てられ、いまは“神獣”として在れと望まれ、そして本人も『人』であり『神獣』である自分を、その狭間に置いているのが、解るから。
そのどちらも、彼にとっての『真』なのだ。

(叔母さん。この人が、これからは私の『味方』になってくれるから)

心の内で呼びかけて、告げる。
いつかの朱鷺子の言葉が、いまも瞳子の心の支えだ。

「私はいつでも……いつまでも、トコちゃんの味方だからね?」

友だと思っていた者から、両親のいない可哀想な子だと陰口をたたかれていたと知った日も。
仲良くなったと思った同僚から、融通が利かなくて面白みのない人間だと笑われていることを知った日も。

「トコちゃんのこと悪く言うヤツは、叔母さんが殴ってやる!」

などと、儚げで華奢(きゃしゃ)な身体つきの朱鷺子に、片拳をにぎって見せられ励まされたものだ。