「ミキサー、壊れた日かー……」

ミキサーの調子が悪くて、腱鞘炎(けんしょうえん)になりそうな勢いで、ホイップ泡立ててたあの日。

進藤くん普段何して遊んでんの? とかって話になって。

「あれ、弟の話だったんだけど」
「え……?」
「ミキサー壊れかけてて、音すごかったもんね」

まさか、『男』と『弟』を聞き間違えられてるとは思わなかったけど。

それよりも、あの日、あのあと見るに見兼ねたらしい進藤くんが、ホイップ泡立てるのを代わってくれたことのほうが、よっぽど印象に残ってたよ……。

「……そうだったんですね」

ポツリと、何かに納得したように相づちをうつ進藤くんの様子に、私は今日これまでの自分の言動を振り返る。

───泊めてくれ発言からの、間接キス。

彼氏がいる女と思われていたのなら、どんだけビッチだと思われていたんだ……。

なんだか、急にいたたまれなくなった私は、とにかく遅い夕飯を食べることに集中した。