縁談会場は、前と同じラストランの個室を予約した。

私がラストランに着くと、奏吾さんはもう来ていた。

私は、緊張で奏吾さんを見たまま固まってしまう。

「陽月、座らないの?」

奏吾さんに促《うなが》されて、私は慌てて席に着く。


「ねぇ、陽月。少し昔話をしてもいい?」


「え……?」


奏吾さんは、いつも通り優しく笑う。


「俺は小さい頃、行きたくもないパーティに何度も連れてかれていたんだ。それでも、愛想を振り撒いていれば簡単な場所だった」

「そこで、ある女の子に出会った。愛想を振り撒くのが下手で、周りからも煙たがられている女の子。姉妹からもキツく当たられているようだった」


奏吾さんが、私と目を合わせる。


「それが陽月」


奏吾さんは小さい頃の私を思い出しても、優しい笑顔のままだった。