愛されることを知らない私は、御曹司様と出会い溺愛される

縁談当日。

結局、断ることも出来ずに私はレストランまで来ていた。

とりあえず、相手には謝るしかない。

妹の我儘で振り回してしまったこと、代わりに私が来たこと、そしてこの縁談をなかったことにして欲しいこと。

伝えることは分かっている。

あとは、頭を下げるしかない。

その時、私の前の席に男性が近づいて来たのが分かった。


「深井さん?」


私は恐る恐る顔を上げて、相手の顔を見る。


「え……?」


目の前には私の働いている会社の社長が立っていた。

滝田財閥の御曹司、滝田 奏吾《たきだ そうご》。

いや正しくは、私の会社は滝田さんの会社の子会社なので、面識はない。

私が勝手に顔を知っているだけだ。