愛されることを知らない私は、御曹司様と出会い溺愛される

案内用の資料を読んでいると、隣から日野下さんと他の女性社員の話が聞こえてくる。


「深井さんに押し付けちゃったけど勿体なかったかな?本社の人と繋がっておくのも大事じゃない?」

「本社のおじさんのご機嫌取りなんかしても意味ないでしょ」

「そうそう。私たちはのんびりこの職場でやって行きたいだけだし」


コソコソとそんな話をしていても、他の社員が通れば、彼女達は一瞬で笑顔に戻る。

そんな器用さがないのは、きっと私だけだ。

みんな陰で、愚痴だって悪口だって少なからず言いたいだろう。

それでも、私は上手く立ち回れない。

本当に楽しくなければ、すぐに笑顔を作ることも出来ない。

「ダメだなぁ……本当に私は……」

そう呟いた声は、隣の女性社員達の笑い声でかき消された。