そして、携帯の通知音がもう一度鳴った。

菜々からの連絡だった。


「お姉ちゃん、縁談どうだったー?報告も兼ねて、一度家に帰って来て欲しいんだけど」


その連絡で心臓がドッと速くなるのを感じた。

実家にはここ2年は帰っていない。

母も姉達も私に会いたいとは全く思っていないだろう。


「陽月は本当に可愛くないわね。私の娘じゃないみたい」


実家を出る時に、母は私にそう言った。

今でも、その記憶が私に強く残っている。


「陽月も他の娘達のように可愛かったら良かったのに」


気づけば、視界が滲《にじ》む。

私は慌てて涙を拭った。

ちゃんとしなくちゃ。

今日も会社はあるのだから。