シーラック伯爵家の近くで、グレン殿下はずっと立って待っていらしたようだった。

「エイリル・・・・!何もなかったか!?」

「大丈夫ですわ。しかし、何も情報は得られなくて・・・・」

「そんなことは気にしなくて良い」

その時、私はあることに気づいた。

私もほとんど情報を得られなかったが、【リエナ様もほとんど何の情報も得られなかったはずだ】。



では何故、リエナ様は今回の私の訪問を受け入れたのだろう?



その思考が頭を巡った瞬間のことだった。

急に心臓が締め付けられるように痛み、呼吸が苦しくなる。

「はぁ・・・・!はぁ・・・・!」

「エイリル!」

私に聖女の力は効かない。

しかし、聖女の力以外を防ぐことは出来ない。

ましてや、「紅茶に毒を入れられたことに気づけるはずがない」

いや、本当は気づけたのかも知れない。

それでも、私はリエナ様が私を【殺したいほど】憎んでいるとは知らなかったのだ。

意識が遠のくのを感じる。

薄れゆく意識の中で、グレン殿下が私の名前を呼び続けている声が聞こえ続けた。