本当に神様がいたなんて……。
薫子は呆然として本殿の天井を見上げていた。

神様はすぐに縁切りしてやると言ってから、こつ然と姿を消してしまった。
今本殿には薫子1人だけだったが、神様が残していった火がふたつがけ残っていてふわふわと空中に浮いていた。

それがなければ自分は夢を見ていたのだと思ったところだろう。
火は遊ぶように飛び回ったり、薫子に近づいたりしてくる。

その火に触れても不思議と熱さはなく、変わりに体の芯かわジワリと温まっていくのを感じた。
夜の寒さもいつの間にか感じなくなっていることに薫子は驚いた。

そしていつの間にかうとうとし始めた薫子はふたつの火に見守られるようにして目を閉じたのだった。