月花は愛され咲き誇る

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「では、宴の準備が整いましたらまた参りますね」

 燦人を宿泊するための部屋へ案内した鈴華は、聞き心地の良い声でそう告げると障子戸を閉め去って行った。
 気配も消えると炯はあからさまにため息をつく。

「あの娘、燦人様に馴れ馴れしく……」

 悪態をつきながら彼女が去って行った障子戸を睨みつける炯を燦人は苦笑気味にたしなめた。

「まあ、あれくらいなら可愛いものだろう。同じ一族の者はもっと遠慮がないからなぁ」

 炯と二人きりになり少し言葉を崩した燦人は、火鬼の一族の女性達を思い出す。
 燦人は他の一族から嫁を取ると決まっているのに、積極的に迫ってくる者もいた。
 そういう者達の言い分では、他の一族から嫁を取るのは次代でも良いだろうとのこと。現当主である父が決めたのだから覆すことなど出来ないというのに。

 思い出し苦笑していると、炯が改めて燦人を見て口を開いた。

「それにしても、本当に望みの娘がいるのですか? ざっと見た様子ではそれらしい姿の者も力の強そうな娘も見当たりませんでしたが……」

 主人の意を否定してしまう言葉になってしまうためか僅かに心苦しそうだ。
 だが、燦人はそれを咎める事もせずはっきりと言ってのける。