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 指を切ってしまったけれど、カットしていたフルーツには幸い血がついていなかった。
 おかげでフルーツタルトは無事完成。
 指の痛みはありつつ、美味しく頂いて落ち込んだ気持ちも浮上してた。

 そんな帰り道でのこと。

「……ん? 何だろう?」

 日も暮れてきて人の気配が少なくなった公園前を通るとき、前からボロボロな男の子が歩いて来るのが見えた。
 明るい茶髪はボサボサで、黒い学ランはまるで踏まれたみたいに靴跡がついている。

 大丈夫かな? と思いつつ、進んで関わろうとは思っていなかったんだけど……。

「うっくぅ……」

 丁度私とすれ違うってときに、彼はうめいて地面に倒れてしまった。

「えっ⁉ だ、大丈夫ですか⁉」

 流石にすぐ近くで倒れられて声を掛けないわけにはいかない。
 でも、声を掛けても肩を揺すってみてもうめき声が聞こえるだけ。
 周りを見回しても他に助けてくれそうな人はいなくて。

 仕方なく私は何とか男の子を起き上がらせ、すぐ近くの公園のベンチに座らせた。

「えっと、大丈夫ですか?」
「ん……サンキュ」
「っ⁉」

 少し回復したのか、小さく笑みを見せてお礼を言ってくれる。
 でも彼の顔を見た私は思わず息をのんじゃった。