ヴァンパイアに咬まれても痛みはそれほどないって聞いたけど、嘘でしょう⁉

 聞いていた話と違う! と怒りに似た気持ちが湧いたけれど、次の瞬間には何故かその痛みは消えていた。

 残るのは、甘く痺れるような刺激。
 そして、私の中にあるものを吸われている感覚。

「んっ……あ……」

 未知の感覚に恐れを含ませた切なげな声が零れる。
 自分の血を吸うヴァンパイアよりもその感覚が怖くて、思わず男の袖を掴んだ。

「っはぁ……甘い、今まで味わったことのない極上の血……」

 のぼせたような意識の中に艶っぽい呟きが聞こえた。
 そのまま咬み痕に舌が這い、舐めとられているんだと分かる。

 あ……そっか、ヴァンパイアの唾液には傷を治す効果があるんだっけ。

 怖いと思った感覚がなくなって安堵した私は、少し考える余裕が出来た。

 ドクドクと血があふれ出る感覚も無くなり良かったと素直に思う。
 でも、柔らかい舌の感触が物凄く恥ずかしい。

 治しては貰いたいけど、でもこれっ……なんか、変な感じが。

「んっ」

 どこか甘い吐息が漏れそうになって、グッと喉に力を入れた。