「実は、君と話したあの公園で君を見るのは初めてじゃないんだ。あの公園は私の帰り道だから」

「仕事が早くて、人に頼らない。俺は君が強い人だと思っていた」

「しかし、君は誰かに怒られたり、仕事が忙しくて疲れている時は決まってお店でお酒を飲んであの公園で涙目になっている」

「それでも、いつも自分で気合を入れていた。そんな君が好きだった。それでも、急に結婚を申し込むつもりなど毛頭《もうとう》なかった」

「あれは君と公園で話した数日前だ。君の祖母が亡くなった翌日で、君が忌引《きびき》で休んだ日だった」

「俺はいつもより遅い時間に帰ったのに、君はあの公園にいた。きっと家に帰りたくなかったんだろう。ああ、この子の安心して帰れる場所になりたいって思ったんだ」

「ただ上を見上げて涙を溢さないようにしている君を甘やかしたかった」


藤木さんがそっと私の頬に触れる。