「フレアが甘えられるくらい、俺も大人になりたい。フレア、俺を頼ってくれ」

そう仰りながら微笑む姿は、小さい頃、アルベルト殿下と自分を比べ泣いているロイ殿下の面影は無かった。

「ロイ様は大人になりましたね」

私はつい口からそう溢れてしまった。

「フレアに釣り合う男になりたいからな。フレアは恋をしたことはないのか?」

「ありませんわ」

私は俯きながらそう答えた。

公爵令嬢として生まれ、愛のある結婚より政略結婚が身近にある世界だった。