翌日、学園が休暇の日だったので、私は屋敷で本を読むふりをしながら頭を悩ませていた。

コンコン。

執事長が私の部屋の扉をノックする。

「お嬢様、ノア・ヴィアーズ様がいらっしゃいました」

どうしよう、まだ心の準備など到底出来ていない。

「どうしてもお嬢様の顔を一目見たいと、とても苦しそうに仰っておりました。どうか、会える時間を大事にして下さいますよう。お嬢様を幼い頃から知る者のお願いです」

執事長がいつもの優しい声色でそう言った。

「ノア様を客間に通してくれるかしら?」

「かしこまりました」