チラッと目配せした母に父が苦笑いで返す。

喧嘩ではなかったけど、この空気感は何か問題が起きたんだなと読み取れた。



「実は、さっき病院から電話があって。おばあちゃんが熱中症で倒れたそうなの」

「ええっ⁉」



話を切り出した母に目を丸くする。



「っだ、大丈夫なの⁉」

「大丈夫。今は回復していて会話もできてるらしいわ」



安心して体の力が抜けた。


母方の祖母は毎日散歩するくらいとても活発。
だけど歳は70代後半。心は元気でも体はそうともいかない。

高齢者の熱中症は特に危険だっていうし。とにかく無事で本当に良かった。



「念のため、今日は入院するんですって」

「そっか。なら安心だね」

「ええ。ただ、手続きのために来院しなくちゃいけなくて……」



沈んでいく表情。気まずい顔だった理由と潜んでいる不安を瞬時に察した。



「だから大丈夫だって。昔は1人でも回してたんだから」

「でも、それだと休憩できないじゃない。昔と今じゃ気候も違うのよ? もし何かあったら……」

「私がやるよ」