うわぁ、湿ってる。前髪も汗でびしょびしょ。

早く涼みたいけど、このまま教室に入るのはちょっと……。


キョロキョロと周りを見渡し、誰もいないのを確認した後、シャツのボタンに手をかける。


汗臭いって思われないように、せめて上半身だけでも綺麗にしておこう。



「皆吉さーん!」



タオルで拭いていると、突然、静かな駐輪場に私の名前が響いた。

恐る恐る振り向いた先には……笑顔で手を振るフランス人形くんの姿が。



「おはよー!」

「お、おはよ……!」



背中を向け、慌ててはだけたシャツを直す。


な、なんで乃木くんがここに……⁉ 自転車通学じゃないよね⁉

暑くて涼みに来たとか? ちょうど日陰だし。
いや、それなら真っ先に冷房が効いている教室に行くはず。


もしかして、私のことを見かけて追いかけてきた……?



「どうしたの? 何か用事でもあった?」



駆け寄ってきた彼に平然を装って尋ねる。



「さっき都丸先生に、『少しフラついてたから様子見てきてくれない?』って言われて。どこか具合悪いの?」