シャルロット様は私に気づくと、グレッグに話しかけにっこり微笑む。どこかを指差しているのを見ると、2人で移動しようとしているのかもしれない。


(またシャルロット様……、どうしよう。今私がグレッグのもとに行って、みんなの前で嘘つきだと言われたら。グレッグの努力が報われた日に、そんなことで彼に恥をかかせたくない! それに私だって、注目されている時に婚約破棄だなんて嫌!)


 私はいそいで2人に背を向け、わざと人混みの中に入る。遠くでグレッグが何か叫んでいるような気がしたけど、止まることなく走り、なんとかバルコニーに逃げることができた。


(どうしよう……帰るにしてもグレッグの馬車で来たから、王宮の予備の馬車を借りなきゃ!)


「―――信じられない!」
「―――恥しらずね!」


 会場からは大きな声で争っている様な声が聞こえる。