「颯真と不仲なんだって?」

 雑誌の撮影スタジオに行くと、最初にインタビューを受けた後、写真撮影をする事になった。
 最初に颯真が呼ばれて、衣装合わせが終わるのを待っている間、マネージャーに呼ばれた水月は廊下に出ていた。

「戻って来た時の為にも、颯真とは仲良くした方がいい……お互いの為にもな」

 光の正体を知っているマネージャーは、光が戻って来た時に備えて、颯真とは良好な関係を築くように進めてくる。

「そうですね……」

 水月だって、それはわかっている。
 それでも、颯真を騙している事に変わりはない。

「それが嫌なら、早く打ち明けろ。そうすれば、これ以上、颯真は関わってこない……」
「茂庭さ〜ん。衣装を合わせます!」

 二人が話していると、スタイリストが呼んでいた。

「ほら、行ってこい」
「はい……」

 マネージャーに送り出されて、水月は戻ったのだった。

「茂庭さんには、こちらの衣装を用意しています!」

 スタイリストが見せてきたのは、白の薄手のTシャツに、黒のショートパンツだった。

「これって……」
「出島さんと色違いです。お二人の若さと純粋さを表現できると思います!」

 サイズ合わせ中の颯真を見ると、黒色のTシャツを持っていた。

「さあ、サイズを合わせるので、着替えて下さい!」
「ここで!? でも……」

 こんなに薄手のTシャツだと、胸の膨らみを隠すサポーターが透けて見えてしまう。
 それ以前に、人前で着替えたら、正体がバレてしまう。

「大丈夫ですよ。誰も気にしませんから」

 水月が戸惑っていると、他のスタッフも集まってくる。
 室内にマネージャーはいなかった。外で待機しているのだろう。
 止めてくれる人が誰もいなかった。

(どうしよう……。ここで、撮影を止める訳にもいかないし……)

 一歩、二歩と、後ろに下がる。
 グイグイと衣装を押しつけてくるスタイリストから逃れようとしていると、不意に水月の背中が誰かにぶつかった。

「すみません。コイツ、シャイなんです」

 ぶつかった相手は、颯真だった。

「光の衣装を、俺が着てもいいですか?」
「それは……。まあ、出島さんも白が似合いそうなので、構いませんが……」
「ありがとうございます。それなら、俺の衣装を光に渡します」

 水月の代わりにスタイリストから衣装を受け取ると、自分が持っていた衣装を渡してくる。

「光。あそこのパーテーションの中で着替えておいで」

 水月の肩を支えながら、颯真は奥のカーテンで仕切られたパーテーションまで連れて行く。

「ここは、俺に任せて」

 耳元で囁くと、パーテーションの中に水月を押し込める。

「そう……」
「あとで」

 片目を瞑ると、颯真はカーテンを閉めたのだった。