嫌悪も露わに大橋さんを睨む真理愛さん。

 それをものともせず笑顔で受け止める大橋さんは、やっぱりどこかがおかしい。

 そんな二人のやり取りを聞きながら、久島先生は何を考えていたんだろう?

 覚悟を決めた目をして、顔を上げた。


「怜伽……あなたを野放しにはしておけないわ」

「朝霞?」

「仕事上のパートナーとして、私も責任をもつわ」

「朝霞、何を⁉」


 久島先生の行動は予想外だったんだろう。

 大橋さんが止める暇もなく、彼女は手に持っていた彼の血の結晶を飲み込んだ。

 みんなが息を呑み驚く中、私を抱いていた櫂人がポツリと呟く。


「隷属の、契約……」


 その言葉で私は大橋さんの説明を思い出した。

 血の結晶を奪い取って無理やり従わせる《隷属の契約》。

 今、久島先生がそれをしたということなんだ。