聖夜に舞い降りた灼熱のサンタクロース

純次くんの視線が、ツイード素材のロングスカートに注がれる。


初詣の後、観光で訪れたショッピングモールで購入した。

スカートを穿くのは大学の入学式で着たスーツ以来。ズボン一辺倒だった私には勇気のいる選択だった。

けれど、『絶対似合うから!』と暁子に背中を押されたのと、お正月の割引セール中だったこともあり、挑戦してみた。



「変、じゃないかな?」

「全然。似合ってるよ。ね、進市」

「うん。アイシャドウの色とも合ってるし、洗練された大人の女性に見える。素敵だよ」



ドキンと、胸が音を立てると同時に、一瞬熱を持った。


清水くんの言った通り、今日はアイシャドウに加え、アイラインにマスカラ、ハイライト、シェーディングを塗ってきた。

つまり、普段の省エネメイクではない。



「ありがとう……」

「え、なんか俺だけ鈍い人みたいになってるんだけど。化粧してるの!?」

「う、うん」

「気づけなくてごめん! どこに塗ってるの? まぶた?」

「こら、ジロジロ見ない」



顔を覗き込もうとする純次くんを清水くんが目隠しで制止する。


フルメイクとはいえど、目元は前髪で隠れてしまっているため、目を凝らさないとなかなか気づかない。


早まるな照未。彼にはお姉さんと妹さんがいる。私が男心を知っているのと同じ。自意識過剰になるな。

そう強く言い聞かせるけれど……。


『素敵だよ』


温かみのある低い声が、頭の中で何度も再生されて。昼休みが終わっても胸の鼓動が鳴りっぱなしだった。