心臓が、尋常じゃないほど暴れている。
くっつけば少しは安心するかなと思っていたけれど……逆効果だった。
男女共に好きな香りの上位に君臨する、シャンプーと石鹸。その人気の高さから専用の香水も売っているほど。
お風呂は済んでいるので、個別で持参した人以外は全員同じ香りをまとっている。
施設への移動中も、ロビーで待機中も、鼻が麻痺するほど嗅いだというのに……。
そう、これは姉ちゃん。
男ウケを意識した服装で合コンに参加したものの、誰とも連絡先を交換できず、帰り道の居酒屋でやけ酒している姉ちゃんを迎えに行き、慰めながら家に連れて帰るところだと思え。
「あの……もう少し近くに寄っても、いい、かな?」
「うん。いい、よ」
距離が縮まり、清潔感のある香りが鼻腔をくすぐる。
ダメだ。姉ちゃんはこんな可愛い声してない。そもそも未成年を酒豪に置き換えるところから間違っていた。
ならば、舞《まい》をトイレに連れて……いや、さすがに無理があるな。付き添ってたの10年も前だし。声質もハスキーだから話すたびにリセットされる。
そうこうしている間に大広間に到着。
意を決してドアを開けたら、幽霊の格好をした部長が待ち構えていて、先ほどのペアと同様に叫んだのだった。
くっつけば少しは安心するかなと思っていたけれど……逆効果だった。
男女共に好きな香りの上位に君臨する、シャンプーと石鹸。その人気の高さから専用の香水も売っているほど。
お風呂は済んでいるので、個別で持参した人以外は全員同じ香りをまとっている。
施設への移動中も、ロビーで待機中も、鼻が麻痺するほど嗅いだというのに……。
そう、これは姉ちゃん。
男ウケを意識した服装で合コンに参加したものの、誰とも連絡先を交換できず、帰り道の居酒屋でやけ酒している姉ちゃんを迎えに行き、慰めながら家に連れて帰るところだと思え。
「あの……もう少し近くに寄っても、いい、かな?」
「うん。いい、よ」
距離が縮まり、清潔感のある香りが鼻腔をくすぐる。
ダメだ。姉ちゃんはこんな可愛い声してない。そもそも未成年を酒豪に置き換えるところから間違っていた。
ならば、舞《まい》をトイレに連れて……いや、さすがに無理があるな。付き添ってたの10年も前だし。声質もハスキーだから話すたびにリセットされる。
そうこうしている間に大広間に到着。
意を決してドアを開けたら、幽霊の格好をした部長が待ち構えていて、先ほどのペアと同様に叫んだのだった。



