聖夜に舞い降りた灼熱のサンタクロース

テストが終わってしばらく経った、8月上旬の平日。



「──では、これから出発します。途中、サービスエリアでお昼休憩を挟みますが、もし体調が悪くなったりしたら、すぐ知らせてください」



午前9時。蒸し暑い貸切バスの車内で、部長がマイクを使って部員たちに呼びかけた。

四方八方から、「はーい」「了解でーす」と返事が上がる。


アウトドアの定番イベント、キャンプ。

毎年夏休みの頭に開催されており、サークル内では参加率ナンバーワンのイベントなんだとか。


しおりを読みながら発車を待っていると、右隣からご機嫌な声が聞こえてきた。



「いよいよだね〜。泊まりのおでかけは修学旅行ぶりだからすっごく楽しみ!」

「俺も。中学ぶりのキャンプだから、ちょっとドキドキしてる」



乗車してからずっと口角が上がりっぱなしの前田さんだけど、目の下にうっすらクマができている。

ワクワクしすぎてあまり眠れなかったんだな。



「レクリエーション、何するんだろうね? アウトドアらしく、やっぱり外でやるのかな?」

「かもね。先輩に聞いたら、去年は宝探しとパラパラを踊ったんだって」

「宝探しかぁ。ビンゴ大会みたいに、見つけたものはもらえたりするのかな? パラパラも楽しそう」