聖夜に舞い降りた灼熱のサンタクロース

自嘲気味に笑いながら眼鏡をかけ直す清水くん。


穏やかで、料理上手で、頭も良くて。
だらしない私より何倍もしっかりしてて。

今までの人生、壁にぶち当たっても難なく乗り切ってきたんだろうなって思ってた。



「……悪気があって言ったわけじゃなくても、やっぱ複雑だよね」

「前田さんもあるんだ」

「私も男兄弟に挟まれて育ったから。昔から背も高かったし」



帽子を持ったまま、全身鏡に視線を移す。


男性の平均身長とほぼ同じ身長の私。気づいた時は既に周りの同級生よりも頭1個分飛び抜けていた。

小学生の頃はさほど気にしてはおらず、むしろバスケで有利になると、長所として捉えていたのだが、中学に入ると──。


『あんたたちよりも照未のほうが断然かっこいいから!』


昼休みの時間。教室でモテ自慢をする男子たちに、部活仲間の女子が笑いながらそう言い放った。


嫌な気持ちになったとか、恥ずかしい思いをしたとか。苦く切ない思い出ではなく、日常の一コマに過ぎない出来事。

だけど、男心を熟知していた私は、プライドを傷つけてしまったのではないかと勝手に思い込んで。それがきっかけで髪を伸ばし始めたんだよね。

だから、清水くんの気持ち、なんとなくわかるんだ。


昔話をした後は、再び店内を見て回った。



「割引品でも、なかなかいいお値段するね……」

「まぁ、専門店だからね」

「清水くんは買ったことある?」

「うん。1回だけ、大学の入学祝いにキャップを。……ワゴンに入ってたやつだけど」

「あはは。学生にはちょっと勇気いるよねぇ〜」



コーデュロイ素材のキャップをワゴンに戻す。

買えない値段ではないが、さすがに1日分の給料をつぎ込む勇気はまだ持てず。

試着だけして退店したのだった。