聖夜に舞い降りた灼熱のサンタクロース

チョコをまとめて二粒口に含んだ兄。

サラリと口にするにはあまりにも衝撃的な内容。二粒目を開封する手を止めて目を見開いた。



「その顔、信じてないな」

「だって……色々と、優秀だったやん。勉強も部活も、人望だって……」



私が前田家の愛されおてんばちゃんなら、兄は文武両道のカリスマヒーローだった。


成績は常に10位以内をキープしており、部活ではエースアタッカー。大会でも観客を沸かせるほどの活躍っぷりを見せていた。

私にはうざったく感じる世話焼きな性格も、周りの人には美化されて映っており、面倒見が良く、情に厚い性格と褒め称えられていた。

兄の友人から聞いた話では、毎年生徒会からスカウトを受けていたそう。


そんな、自慢の息子を体現したような兄が、書類落ちだなんて。

面接官の目が節穴か、兄以上に優秀な人材がいたという考えに至るが、人格まで出来上がっている人はそうそういない。



「なんで……?」

「俺だって知りたいよ。これでも3年の頃から綺麗な書類が書けるように硬筆勉強したし、髪の毛も暗くしたし、ビジネス本も毎日読んだ。スーツも奮発してワンランク上のを買ったし、言い方がきついって言われたことがあったから方言抑えて話すようにしたり……」