聖夜に舞い降りた灼熱のサンタクロース

──プツリ。

堪忍袋の緒が切れる音がして、ピタリと足を止めた。



「……さっきからなんなの」

「え?」

「そんなことない。運に恵まれたから。俺よりもすごい人はいる。じゃあ私は? 1個ももらえない私は運にも見放された才能もない人間ってこと?」



ポカンと口を開けたまま、固まっている。まるでどうして怒っているのかわからないような顔。

だけど1度切れたリミッターはそう簡単には止まってくれず。怒りと嫉妬が入り交じった言葉が次から次へと口から飛び出す。



「何が実質2つよ。何が第一志望よ。補欠でも合格は合格やろ!? よそで拾ってもらえたんだから贅沢言わないでよ!」

「ちょ、前田さ……」

「こっちは……こっちはスタートラインにも立てないっていうのに……っ」



信号が点滅する中、横断歩道を走り渡った。

後ろから呼び止める声が聞こえてくるけれど、1度も振り返ることなく、一目散に帰宅。

自室のドアを開けるやいなや、バッグを床に放り投げて、畳まれた布団に飛び込んだ。


どうして? なんで?
どこがダメだったの? 何がダメだったの?

志望動機が弱かった? 自己PRに魅力を感じなかった?

でも、書類選考は突破できてるから、問題があるのは書き方ではない?

じゃあ話し方? 表情? 姿勢? 身だしなみ?

それか……気に入らない見た目、だった……?



「もう、いやだ……っ」



拳を振り上げて、行き場のない感情を布団にぶつける。


憎んだって何も変わらない。そもそも話を切り出したのは私。私が話題にしなければ平和で終われたのに。



「なんで……っ、なんで私だけなの……っ」



羨ましい羨ましい羨ましい。
悔しい悔しい悔しい。
悲しい悲しい悲しい。──恨めしい。


増大した醜い感情は心を蝕んでいくばかり。

書類作成も放棄して、涙が枯れるまで泣いたのだった。