聖夜に舞い降りた灼熱のサンタクロース

人気のない夜道に、驚愕する声が響いた。

チャコちゃんも、どうしたの? と心配するように誠さんの顔を見上げていて、またもや制止できなかった自分を悔やむ。



「酔っ払うと、こんな感じなんですか?」

「うん。ほろ酔いの時はニコニコしてるだけなんだけど、酔いが進むと饒舌になってさ」



誠さんから、お酒デビューした時の彼の様子を教えてもらった。


テスト期間中に20歳を迎えた清水くん。

勉強に支障が出ないようにと、当日はホールケーキでお祝いし、お酒は春休みに入って飲んだらしいのだけど……。

酔いが回りやすい体質だったらしく、缶チューハイ1缶でふにゃふにゃになっていたと。



「猫なで声でチャコに話しかけてたのを見た時、これはきちんと教育せんといかんなと思って」

「ですね……」



キャパオーバーして頭がパンクする。身体に合わない物を無理して食べ続けて健康に支障をきたす。

そうならないためにも、自分の限界値を知ることは非常に大事だ。

だがこの世界では、万が一の場合や、予想外の事態も発生するので、とっさに対応できる能力もある程度必要とされる。


教育した結果がこれかよと、自律心のある人が見たら呆れられそうだけど、わずかな理性を保ちながら1杯飲み干すごとにお口直ししていたから、あまり責めないであげてほしいな。




「──本当に、ここで大丈夫?」

「はい。ありがとうございました」



愛犬トークに花を咲かせること、約20分。住宅街の入口に到着した。

深々とお辞儀をしたついでに、腕時計を盗み見る。

9時25分。帰宅予定時刻の5分前だが、ここまで来れば速歩きでも間に合う時間だ。



「じゃ、気をつけてね。お兄さんによろしく」

「はい。……あのっ、誠さん」

「ん?」

「清水くん……進市くんは、私を助けてくれたので、あまり怒らないでくださるとありがたいです」



最後に伝え損ねた情報を付け足し、「それでは」と再度頭を下げてその場から立ち去った。