聖夜に舞い降りた灼熱のサンタクロース

内心驚きつつも、励ましの声をかける。


神社巡りが趣味か、御朱印集めが目的か。それかどうしても叶えたい願望があったか。

何でもかんでも神頼みしてるなら叱咤されるかもしれないが、友達の付き添いなら問題はないのでは? むしろお疲れ様と労ってくれそう。


20分ほど滞在したのち、神社を出た。

下山の最中、彼女が帰省した日のエピソードを語ってくれた。



「家の近所に神社があってね。年末詣と初詣は毎年そこに行ってるんだ。もう、13年くらいになるかな」

「行きつけの神社かぁ。いいな。引っ越す前も行ったの?」

「うん。お別れの挨拶と、また来ますねって。学校行く前、毎日お参りして行ってたから。いきなり来なくなったら心配するかなって。神様もそうだけど、狛犬にも話しかけてて……」



遠い目で話し続ける前田さん。

ランドセルを背負って神様に報告する姿が容易に目に浮かんで、微笑ましい気持ちで満たされた。

しかし、チクチクと現実が胸を刺激して。口から出てくるのは「そうなんだ」「いいね」と当たり障りのない返事たち。


朝からずっと、浮かれっぱなしだったもんな。


わかってる。彼女とは今の距離感がベストだと。

あわよくばとか、もしかしたらとか。期待を感じさせる言動を取られたとしても、真に受けてはいけない。


だってこの幸せは、きっと今だけ。いずれは終わりを迎えてしまうのだから──。