聖夜に舞い降りた灼熱のサンタクロース

夏休みが終わり、後期の授業が始まった10月。



「──それでは、これより出発します。休憩所やトイレには毎回立ち寄りますが、体調が悪くなったり怪我をした場合は、すぐにお知らせください」



日曜の午前10時半。登山口前の広場で、部長がメガホンで部員たちに呼びかけた。

スポーツウェアに身を包んだ彼らから、「はーい」「了解しましたー」と返事が上がる。



「晴れて良かったね〜。風も少ないし」

「絶好の行楽日和だよね」



隣に立つ前田さんと顔を合わせ、小さく相づちを打つ。


アウトドアサークル一行が来たのは、学校からバスで約1時間半の距離にある山。

登山で人気の山らしく、地図にも登山コースが複数描かれているが、標高はおよそ600メートルと、初心者でも挑戦しやすい高さ。

サマーキャンプと同様、毎年恒例のイベントだ。


注意事項を聞き、改めて身なりと持ち物を確認して、いざ出発。登山用のステッキも使って、一歩一歩地面を踏みしめながら進む。


コースは最低難度なので、ハイキング感覚でいけるけれど、油断は禁物。

岩肌をよじ登ったり、水の中を突き進むことはなくても、急勾配の坂や長い階段がある。