聖夜に舞い降りた灼熱のサンタクロース

「ごめんね。帰る直前に」

「気にしないで。むしろ乗る前に気づけて良かったよ」



手当て中の彼から視線を前に向け、ロータリーを出ていくバスを見つめる。

乗るはずだったバスは、つい先ほど、お客さんを10人ほど乗せて発車してしまった。

田舎町ではないのでまだ本数は残っているとはいえど、予定を狂わせてしまったのでは……と罪悪感が募る。



「よし。とりあえず、傷は消毒したから」

「ありがとう」



手当てが終わり、足元を見る。

薬指には細めの絆創膏が巻かれ、親指の付け根には擦れた箇所を保護するように絆創膏が貼られていた。



「清水くん、準備万端だね。私、ハンカチしか持ってきてないのに」

「いやいや。俺も普段は持ち歩かないよ。田尻先輩に言われて持ってきただけで……あっ」



しまった。ペラペラ喋りすぎた。と言わんばかりに清水くんの口から小さく声が漏れた。

あぁ、やはり秘密にしておきたかったのか……。

気まずそうな表情でベンチに座った彼を見て、肩を落としつつも、ラリーを続ける。



「田尻さんと、会ってたの……?」