聖夜に舞い降りた灼熱のサンタクロース

歓迎会から1ヶ月。学校生活や都会生活にも慣れてきた頃。



「──煮え立ってきたら、お肉を入れて、おたまかちっちゃいざるでアクを取る」

「アクって、泡みたいなドロドロしてるやつでしたっけ?」

「そうだよ。で、次が、みりんとしょうゆを加えて、落とし蓋をする」

「みりんとしょうゆを入れる……っと。落とし蓋って、なんでしたっけ?」

「煮崩れしないように直接かぶせる蓋のことだよ。いつもは専用の蓋を使ってるんだけど、今回は大きさが合わないからアルミホイルでやっちゃうね」



鍋に入れた牛肉を菜箸でほぐしながら、口頭で説明する副部長。

その隣で私は持参したメモ帳に手順を書き記す。


グツグツ、ジュージュー、パチパチ。

食欲をかき立てる音と匂いが充満しているここは、校内にある調理実習室。

月曜日の今日は料理研究サークルの活動日で、現在肉じゃがの作り方を教わっている。



「人によっては、先にお肉を炒めたり調味料を入れたりするけど、基本的にはこんな感じ。他に何か聞き逃したところとか気になることはある?」

「専用の落とし蓋って、どんな感じのものなんですか?」

「色んな種類があるよ。ステンレス製、木製、シリコン製……私は大きさ違いで3つ持ってるけど、洗うのが面倒だから最近はアルミホイルでやってる」