聖夜に舞い降りた灼熱のサンタクロース

「忘れ物はないか? 財布は持ったか?」

「持ってるよ。あと、ブザーもこの通り」



花火大会当日。玄関で念入りに確認してくる兄に、折りたたみ財布と防犯ブザーを見せつけた。



「お兄ちゃんは、もう少ししてから?」

「ああ。あと30分くらいしたら出る予定。何人で行くって言ってたっけ?」

「3人。花火が終わったらすぐ帰るから。そろそろ時間だから行くね」



壁掛け時計を見たら、バスの発車時間まで10分を切っていた。「いってきまーす」と早口で言い残して出発し、慎重に階段を下りてバス停へと急ぐ。


花火大会の会場までは、バス移動。

まずは会場の最寄り駅まで行き、純次くんと合流。そこから臨時のバスで向かうというスケジュールだ。


着崩れしないよう小股で歩いていたら、ちょうど着いたタイミングでバスが来た。

整理券を取って乗車し、窓際の二人掛けの席に着席。じんわりと額に浮かんだ汗をハンカチで拭い、息を整える。


バスで行くとは話していたものの、何時ので行くかは知らない。

けど、もし私と同じタイミングで出発したのなら、多分、次の停留所で……。